ガイドライン・使用実績
乳癌および乳腺腫瘍術後の乳房再建を目的としたゲル充填人工乳房および皮膚拡張器に関する使用要件基準
2012年9月28日に、ブレスト・インプラント(シリコンゲル充填人工乳房)が日本で初めて薬事承認を取得しました。加えて乳房再建用ティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)も承認されました。これらの機器は適正使用の観点から、承認条件として「関連学会と連携の上、実施施設基準、実施医師基準を設け、乳房再建術または乳房増大術に関連する十分な知識と経験を有する医師により、同術の実施体制が整った医療機関において本品が使用されるよう、必要な措置を講ずること」などが求められています。
そこで日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会が連携して、乳房再建を目的としたブレスト・インプラントおよびティッシュ・エキスパンダーに関する使用要件基準案を作成し、2013年2月「乳癌および乳腺腫瘍術後の乳房再建を目的としたゲル充填人工乳房および皮膚拡張器に関する使用要件基準案」が各学会の理事会で承認されました。その後2013年7月には乳癌に対する本医療機器の使用が保険適用となりました。
本使用要件基準の目的は、ブレスト・インプラントを適正に患者に使用し、長期にわたり安全性を確保できる体制を構築することです。ブレスト・インプラントの安全性や有効性はかなり向上したとはいえ、カプセル拘縮の原因はいまだ解明されておらず、予防法も確立していません。米国のFDA(アメリカ連邦食品医薬品衛生局)は、「ブレスト・インプラントは生涯体内に挿入可能な材料ではないことを認識することが重要である。患者は手術前にブレスト・インプラントにともなうリスクと術後長期間にわたる診察について十分理解しなければならない」と警告しています。ブレスト・インプラントは国内外においていろいろ経緯のあるものなので、安易な使用は厳に慎む必要があります。したがって最初から全ての施設で使用することを目指すのではなく、実施体制の整った施設から順次使用を拡大して行くことが重要であると考えています。
なお、本使用要件基準で必須となる講習会受講に関する情報は、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のホームページに掲載しています。受講を希望する方はご覧下さいますよう、お願い申し上げます。